Rossi&wing first lightという現在5,700ドルで販売されている10mm R-ESTDD x 1 DBAA x 6構成のハイブリッドイヤホンのレビューです。 DBAA x 6が1ユニットの2BAのことを指すらしいので、一般的な構成として表すと12BA+1ESTになるのかなと思います。
5,700ドルというド級の価格帯のイヤホンですが、何故かうちのオフ会にデモを送っていただく機会に恵まれましたので、それを使ってレビューを書いている形です。だから一応メーカーからのレビュー依頼という形で書かさせてもらいます。
ちなみに今回のは本体のみで届いたデモ用の個体であり、音は製品版と変わらないと説明を受けていますが、それ以外の面では異なるところもあるかもしれませんのでご了承ください。
販売サイトはこちら
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注目ポイント
・𝟭𝟬𝗺𝗺 𝗥-𝗘𝗦𝗧𝗗𝗗(𝗥𝗲𝗮𝗿 𝗘𝗹𝗲𝗰𝘁𝗿𝗼𝘀𝘁𝗮𝘁𝗶𝗰-𝗗𝘆𝗻𝗮𝗺𝗶𝗰 𝗗𝗿𝗶𝘃𝗲𝗿)
→独自の静電ドライバを採用しているようで10年の開発期間がかかったドライバなのだとか
・𝟲 𝘅 𝗗𝗕𝗔𝗔(𝗗𝘂𝗮𝗹 𝗕𝗮𝗹𝗮𝗻𝗰𝗲𝗱 𝗔𝗿𝗺𝗮𝘁𝘂𝗿𝗲 𝗔𝗿𝗿𝗮𝘆)
・1ユニット2BAを6基積んでいるそうなので、実質12BAを積んでいるようです。
良い点
・音は抜群に良い。圧倒的な情報量の多さとそれを支える解像度の高さがある。
・このイヤホンを聴いた後に他のイヤホンを聴くと音数が少なく感じられるほどの高い情報量がありつつ、それをしつこいと感じさせない分離性能の高さ。
・ドライバ数が多く情報量が非常に多いが、帯域ごとの音の被り、違和感がほぼ感じられない。
・R&W x Luminox Audio Morningstar R2216という690ドルのケーブルが最初から付属しており、下手にケーブルを変える必要が無い
・音場が非常に広く、良い意味でイヤホンで聴いている感じがしない。元々のコンセプトがコンサートホールのクラシックの音をイヤホンでみたいな感じらしいので、非常に頷ける音造り。
悪い点
・筐体がデカく装着感は微妙
・5,700ドル、現在の相場で80万円以上という価格は流石に強気な気はする
音質評価 95点
1、物凄い情報量と広い音場が印象的な音で、コンサートホールの再現を目指したイヤホンというコンセプトが頷ける魅力がある。Luminox Audio Morningstar R2216という690ドルのケーブルが最初から付属するため、初期状態で完成された音と考えられるのもポイントが高い。
音は素晴らしいです。約80万円という価格はちょっと手元に比較対象がまるで無いのですが、少なくとも最近の超高級イヤホン群で試聴したものと比較をしても「高いだけの価値は感じられる」魅力を持っている製品だと思います。音の傾向は軽い低音域寄りですが、とにかく音の情報量が多いです。個人的にこういうドライバ数の多いイヤホンは情報量が多いというよりは「ただ単純に音がゴチャついている」だけの物が多い印象で、それは50万円以上の超高級イヤホン群でも変わらないのですが、このイヤホンはしっかりとした分離性能の高さがあるので純粋な「高密度にならない、高い情報量のある音」を実現しています。正直一聴したときは良い音だけど驚くほどの音ではないかなと思っていたのですが、このイヤホンを聴いた後に手持ちの他のイヤホンを聴いたら情報量が少な目に感じたので「あれ、これは凄いかもしれないぞ」と後から良さがわかってきた感じですw
そして、このイヤホンはかなり音場が広く、それでいて音場が広い製品にありがちな音の輪郭の曖昧さが無く、高い情報量を処理しきれるだけの高い分離性能に支えられて、良い意味でイヤホンっぽくない広大さのある音場で聴けるのがとてもポイントが高いですね。あと、この製品には最初からLuminox Audio Morningstar R2216というLuminox Audioとのコラボの690ドル相当のケーブルが付属するので、下手にケーブルを変える必要が無いのはとてもポイントが高いですね。最近高級なイヤホンでも「ケーブルを変えてなんぼ」みたいな製品が当たり前にありますけど、高級な製品なら最初から相性の良い高級ケーブルつけておけよと個人的には凄く思うので、、、w
音のバランス
高音域 □□□■
中音域 □□□■
低音域 □□□□■
2、全体的なかなり情報量が多い音と広大な音場が特徴的。音は高音域がEST系のドライバでありながらハイブリッドにありがちな悪目立ちをしていないのがとても良い。
音の傾向は軽く低音域寄り。音場はかなり広め。
高音域は明瞭な音を出しつつも、ESTらしい目立ち方はあまりせず、明瞭でありながらも抜けの良い音を鳴らします。EST系のドライバはどうしても超高音域の鳴り方にクセがある印象があり、ドラムのシンバル帯域の金属的な鳴りを強調気味に鳴らすイメージがあるのですが、このイヤホンはしっかりと明瞭に鳴らしつつもその強調感が無く、とても伸びやかで聴きやすい音になっています。正直個人的にはもう少し高音域は主張強めなほうが好きですが、情報量の多さ的に高音域ももう少し出したらしつこい音になりそうな印象もあります。
中音域は非常に豊かな余裕のある鳴り方をします。中音域は少し広がりのある音で、ボーカルの音が良い意味で濃密に、それでいて音像を変に拡大せずに自然な広がりだけを付加してくれる印象でとても聴きごたえのある音になっています。こういうボーカルに厚みがありつつも、ボーカルの質感に違和感の無い音造りはかなり珍しい印象です。
低音域は非常に濃密でありながら分離の良い音を鳴らします。重低音域の表現力が素晴らしく、ウッドベースの深みのある音がズシンと身体に響くような膨らみを持った音で鳴らしてくれます。こういう表現は分離の良いイヤホンだと「良い音なんだけど、アッサリ鳴らしすぎるな」と思うことがあるのですが、このイヤホンは高い分離性能からハードロック等にしっかり対応できるスピード感のある低音も鳴らせるのにも関わらず、ウッドベースのような膨らみと厚みが要求される音はしっかりと重厚な音で鳴らしてくれるのが素晴らしいです。
おススメ度 85点
3、物凄い情報量の高さとそれを支える分離性能の高さ、そして音場の広大さがあり、間違いなくこのイヤホンにしか鳴らせない「唯一無二さ」「圧倒的さ」を感じられる製品ではあるが、5,700ドルと価格も圧倒的。
個人的にはかなり好印象な製品でした。私はむしろこういう高級なドライバ数の多いイヤホンは「ただドライバを沢山積んだだけのゴチャゴチャした音」に感じてしまうことが多く、正直半額でも全然欲しくないわという感想を持つことが多いのですが、このイヤホンはしっかりと圧倒的な高価格に対して「説得力のある音」をしっかり鳴らしてくれる印象があったのが非常に好印象でした。いや、その価格を出したいかと言われると、私の財政的に現実味が無さ過ぎて何とも言い難いのですがねw
何よりコンセプトのコンサートホールのような音というのは音場の広大さから「おーなるほど」と感じられる説得力がありましたし、情報量の圧倒的な高さは唯一無二と言っていい魅力に感じられ、かなり面白い製品だと感じました。
圧倒的な情報量をイヤホンに求める人、広大な音場表現を外でも体験したい人におススメしたい唯一無二の魅力が詰まったイヤホンです。クッッッッッソ高いけどね!(笑)